シンガポール人に打って付けの職業

マラッカのあとは、ジョホールバル(Johor Bahru)というシンガポールとの国境の街を経由し、バスでシンガポールへと入国した。国が変わると、やはり雰囲気も変わる。タイからマレーシアに入国し、はじめてマレーシアの地を踏み、街を見たとき「タイより先進的だな」と感じた。そして今回、はじめてシンガポールの地を踏み、街を見たとき「マレーシアより先進的だな」と感じた。ここでいう「先進的」というのは、「洗練的」とほぼ同じ意味合いのものである。

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■マラッカの夜、ライトアップされるスタダイス(Stadthuys)とクライストチャーチ(Christ Church)

「どこがどう違うから、先進的と感じたのか?」と聞かれると、言葉で答えるのはなかなかに難しいのだが、あえて答えてみると、「街の細部にどれだけ気を配れているか」という点ではないかと、僕は考えている。

だから、摩天楼を見上げる分には、マレーシア(クアラルンプール:シンガポールは都市国家なのでクアラルンプールで対比)もシンガポールもそれほど大差はない。しかし足元を見ると、それは如実に表れる。足元というのは、歩道や花壇、信号機といった、街を形作る細部パーツのことである。

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■摩天楼をバックに従え、吠えるマーライオン

街とは、つまるところ、それら細部パーツの集合体なのである。森が1本の木の集合体なのと同じように。なので、その街の中心部に行かなくとも、郊外の普通の住宅地みたいなところを、バスから眺めるだけでも「先進的の度合い」は十分に計れる。

「先進的の度合い」を前述の単語を用いて表現し直すと、「細部パーツの集合体が奏でるハーモニーの違い」とも言えよう。郊外でもハーモニーの違いを十分に聞くことができる。

そういえば、下関→釜山の船を降りて、釜山の中心街まで歩いていたとき、日本人のおじさんと一緒だった。彼は昔、土木関係の仕事で海外によく行っていたという。歩道に植わっている木を揺らしたり、その周りの支柱を確かめたりと、なんだか忙しい。異国の地に降り立ち、まずやることが「木を揺らす」なのだ。「相当の変人に違いない」と思いながら見ていたのだが、ひと言、「こういうところに文明の差が出る」と言っていた。今、彼と同意見である。

おっと、いけない。硬すぎる。僕は別に「街の評論家」志望ではない。
仮に、お見合いでこんなことをしゃべろうものなら、即破談になるに違いない。あぶない、あぶない。

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シンガポールで感じたことは何点かある。ちょっとまとめてみよう。
まず走っている車のランクが一気に上昇した。高級車が多いということだ。たぶん平均点で言うと、日本より上だと思われる。ポルシェが走っているのを日に何回も見る。そしてさらに特筆すべき点なのが、車がキレイに保たれているということだ。

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■シンガポールの高層ビル群

他の国でも、メルセデス・ベンツやBMWは見かけたが(ポルシェはあまり見かけない)、「せっかくのイイ車をなぜ、ホコリまみれのままにしておく?」と何度もよく思った。

あとは交通マナー。この点に関しても日本より上だと思われる。交差点右左折時の横断歩道手前一時停止で、完全歩行者優先。横断歩道の手前2mくらいにさしかかった時点で、車は一時停止して歩行者が渡るのを待っていてくれている。「いや、このくらいの距離感なら先に車、渡れるでしょ?」と思うのだが、待っていてくれている。みな、教習所の試験時ばりの丁寧な対応なのだ。びっくりした。

今までの東南アジアでは、車が優先で、歩行者は車のご機嫌を伺いながら道を渡るというのが当たり前だったので、これには「シンガポール、レベル高けえー!」と感動した。

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■シンガポールの国別ドメインは「SG」、強そう

そして、シンガポールの人口は約470万人で、そのうちの約77%が華人(中国系)だ。そして公用語が4つもある。英語、マレー語、標準中国語(マンダリン)にタミル語の4つだ。僕が泊まっていたドミトリーでは2人のシンガポール人がいた。2人とも華人(中国系)だ。話すと、英語と中国語はもちろん話せて、1人の方はそれに加え、マレー語と韓国語も少々イケると言っていた。というか、英語と中国語が話せるって時点でヤバいんですけど。どうやら、シンガポール人にとって、バイリンガル・トライリンガルというのは当たり前らしい。「シンガポール人はこれからの時代、超アドバンテージですね」と言っておいた。

マラッカでは、なんとなく入った茶屋で、日系アメリカ人の方と出会った。旅が好きらしく、1年のうちの3分の1以上は旅をしていると言っていた。旅をしつづけたいなら、そういうことが可能なフリーランスとかの仕事を見つけた方がいいよね、という話になった。

彼はその昔、日系アメリカ人というポジションを活かし、通訳の仕事をしていたらしい。企業間の文書の翻訳や、場合によっては通訳として同行もしたそうだ。給料は1時間に1万円が相場だったと言っていた。最高のときは24時間で18万稼げたらしい。「需要の高い、おいしい仕事だよ」と教えてくれた。

ということは、シンガポール人にとって、通訳という仕事はまさに打って付けではないだろうか?今この文章を書きながら、そこらへんの事情をシンガポール人に聞いておけばよかったと後悔している。

ちなみに、宿泊料金は1泊18シンガポール・ドル(約1,100円)で、今まで泊まったドミトリーの中で2番目に高かった(一番高かったのはソウルの約1,450円)くせに、一番狭かった。

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■下から3番目のジェットスター航空のフライトで、オーストラリアはパースへと向かった

シンガポールの次は、オーストラリアだ。
いよいよアジアともお別れ、オセアニアに突入。

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