ケップに到着、そしてボーコー国立公園へ

プノンペンからバスに乗って、無事ケップに到着した。バスにしろ鉄道にしろ、自分の目的地が終点でない場合、一体どこで降りたらいいのか、毎度のことであるが、ものすごい神経を使う。そんなときは、いつも心の中でこうつぶやく。「今日中に必ず○○に着く」今のところ、願いはすべて叶っている。

■ケップ(カンボジア)の海沿いから街をぐるりと展望

宿を決め、荷物を降ろし、さっそく街に繰り出す。ボーコー国立公園に行くツアーがあるかどうか、ツアー会社を探してまわる。そして、それはすぐに見つかった。僕が見た雑誌には「ツアーを組んでる会社は現在あるかどうか不明」そして、「大型ホテルリゾート建設のため30ヶ月間は入山禁止」と書いてあったので、ボーコー国立公園に行くには、もっと困難を極めるものだと勝手にイメージしていた。

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■カニを採る道具、そして山分け会議 @ ケップの海岸

ツアー会社の人と最低でも30分くらい話して、仲良くなって「実はお客さん、とっておきのツアーがありまして…」的な展開になって、店の奥から裏メニューが出てくるパターンか、もしくは、街のツアー会社をすべてまわっても、どこもツアーをやっているところはなくて「あっ、これはもう自分のためだけに、オーダーメイドしてもらうしかないっぽい」と判断して、「はるばる日本からやって来たんです」、「まじでガチなんです!」、「これは本気と書いてマジと読…いや、もうガチなんです!」って感じで、ごりごりに説明して「君の熱意には負けたよ」ってことで、しぶしぶ行ってもらうパターンか、その2つに1つだろうと、そのくらいのレベルだろうとイメージしていたのに、それはそれは堂々と店の前に看板があったので、拍子抜けした。

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今回の観光客を全員乗せて、ミニバンはボーコー国立公園へと向かった。ミニバンの中、僕以外は全員欧米人だ。これは毎度のこと、予想通りだ。東南アジアは基本的にどこもこんな感じだ。ウェルカムな侵攻である。欧米列強はスタイルを変え、今なお続いている。

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■静かに時を刻む山頂の廃墟ホテル

実際には地元の人や観光客がたくさんいた。30ヶ月間は入山禁止ではなかったのか?情報というのはやはり自分の足で手に入れたものが一番強い。

舗装などはされていない、とんでもない悪路。直線の上り坂でさえハンドルを右に左にと忙しい。座っているだけなのに、とんでもなく疲れる。体の芯からぐったりくる。見た感じ、初老と言えるくらいのおばさんもいる、大丈夫だろうか。欧米人は本当にアグレッシブだと思う。好き好んで、こんなところに日本人の年配の人はまず来ないだろう。

老夫婦カップルが2人でビーチでまったりしているシーンも別に珍しくない。例えばこれが、真夏の鵠沼海岸に老夫婦2人で来ていたら、視線が集まってしょうがないと思う。日本ではそういうシーンは見られない。欧米人は旅を楽しむスキルが高いように思う。それはつまり心の年齢が若いのだと思う。そこらへんの事情は日本とはまったく違う。

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■ボーコー国立公園の山頂風景 「夏草や 兵どもが 夢の跡」

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シェムリアップにいたときに、カンボジア人のガイドさんに聞いたところによると、アンコールワット(アンコール遺跡群)というのは、世界遺産にも関わらず所有権は個人にあるらしい。そして、収入の3割がカンボジア政府、もう3割がAPSARAというアンコール遺跡群を管理・保全する団体、最後の4割がSOKHA HOTELに行くそうだ。たしかに、入場券には「SOKHA HOTEL Co., LTD.」という文字が大きく記載されている。

アンコールワットはSOKHA HOTELのトップの所有物らしい。カンボジアにとってのアンコールワットは、日本にとっての富士山に匹敵するインパクトがあるだろうから、なんだか驚きである。

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■現在、建設中の大型ホテルリゾートの完成予想図

そして、ここボーコー国立公園の山頂に大型ホテルリゾートをプロデュースしているのも、やはりSOKHA HOTEL(親会社はSokimex Group)だ。日本の三菱・三井、アメリカのロックフェラー、ヨーロッパのロスチャイルド、カンボジアのSokimex Groupと言ったポジションだろうか。夢の跡に、新たな兵どもが、現在新たな夢を建設中だ。

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今回はツアーだったので、最初から最後まですべて面倒を見てもらえる。帰りは、僕の宿だけ離れた場所にあった関係で、原付バイクで送ってもらった。125ccぐらいだろうか。信号もなくほとんど一直線なので、常にフルスロットルだったと思われる。電灯なんかもちろんないので、ヘッドライトとあとは、まわりを走るバイクと車のライトだけが頼りだ。ヘルメットもなしの二ケツだ。こけたら一発KOだろう。

しばらくすると、そんな状況にも関わらず、僕の前に座る運転手は片手運転をするのだ。「おい、頼むぜ!」と思ったが、なぜ片手運転なのかすぐにわかった。目を掻いているのだ。道路の両サイドはだいたい林のような感じ。そして、夜で電灯もないので、バイクのヘッドライトの明かりに、虫が殺到するのだ。それが次々に目に入る。後ろに乗っていて、メガネもしている僕でさえも、虫が目に入って大変だった。前ならなおさらだろう。

「ちょっと休憩した方がよくねえ?」と思ったが、彼がスピードを落とすことはなかった。前を向いているから、虫が入りやすいのだと思い、横を見た。すると、とんでもなく丸い満月が雲と林の間に見え隠れしている。とてもきれいだった。時間が完全に止まった。それは今日いちばんのシーンだった。

結局、そんな状況のなかを1時間近くバイクは走って、無事に宿に到着した。彼はまた1時間近くかけて来た道を戻るのだろうか、大変な仕事だ。さすがに疲れただろうし、多少は不機嫌だろうなと予想していたが、バイクから降りた彼は、気持ちのよい笑顔をしていた。感謝の気持ちとして、軽いチップかタバコでも渡そうと考えたが、そんな暇もなく、すぐにバイクにまたがり颯爽と夜の闇に消えていった。

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