太魯閣の天祥で飲むビール

AM4:30。警察署にて起床。蚊がブンブンとものすごくて、なかなか寝れなかったが、その浅い眠りが逆に、予定の時間に起きるのには都合がよかった。起きると、部屋の入り口のところで扇風機が回っていた。寝るときにはなかったものだ。警察のどなたかが置いてくれたのであろうか。

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■太魯閣国家公園の入り口にて、Ericと。彼の職業はテレビ局のリポーターとのことだ

トイレを借り、顔を洗い、歯みがきをし、お礼を言って、警察署を出た。今日は5時にEricと、昨晩の食堂のところで待ち合わせをしているのだ。なぜ、こんなに早く出発するのか?

今日進むルートには3つの山越えがあり、「交通量が多くなる前になるべく進んでおきたい」とはEric。特にトンネルが危ないらしい。「My father, my mother, my sister から行くなと言われた」ほどだそうだ。そのため、ここのルートだけは電車を使う台湾一周サイクリストもいるという。

僕はそんなこととはまったく知らなかった。3つの山越えがあることさえ知らなかった。Ericの持っている本を見ると、まるで、ロールプレイング・ゲームの攻略本かのように、山の標高からトンネルの長さまで、詳細なデータが網羅されていた。何も知らずに1人で進んでいたら、越えても越えても新しく立ちはだかる山に、いったいぜんたい、あといくつ越えればいいのだろうと、絶望していたに違いない。Ericと出会ってよかった。

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■上の写真の場所から見えた美しい海。前方に見える山を越えてきました

昨晩の話のなかで、「もし、今日の朝の天気が悪ければ、電車を使おう」という話にもなっていた。そして今、天気は悪くない。自転車で行くことを決め、僕らは走り出した。

すぐに山道になった。なかなかハードだ。僕は自分で、「体力はない」とは思っていないが、Ericがどれほどのペースで自転車を漕ぐのか、少し心配だった。ペース次第じゃ、付いていけない。迷惑をかけてしまう。が、幸い、そのペースは僕が対応できるものであった。

山道を歯を食いしばりながら進んでいると、左手に大きく丸い朝日が見えた。自転車を止め、眺める。Ericは一眼レフのカメラで写真を撮る。僕はポケットから方位磁石を取り出し、方角を確認。「東」。「日出ずる国、日本」とは、そうか、このことか。ふむふむ。

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■東西横貫公路にて、2人だと自分の写真増えますねぇ

小刻みに休憩を入れながら、コツコツ登って行くがなかなか登り道は終わってくれない。そんなとき、数匹の野犬がたむろしているのが視界に入ってきた。げ、こんな山んとこにもいるのかよ…

僕は野犬が大嫌いだ。というか、今回のこの旅のなかで、いろんな国(まぁ、特にインドっす)で野犬に出くわし、大嫌いになった。野犬の群れに囲まれるのは、そこらへんの不良のチンピラにからまれるより恐ろしいことである。恐怖で足がガクガクになり、腰から下がへなへなと崩れ落ちるほどだ。

そして、台湾は意外にも野犬がそこらじゅうにいやがる。困ったものである。野犬の群れに近づくと、もちろんこっちに向かって全力で吠えてきた。こちとら、峠越えでへばってるってゆーのに、やめてくれよ…

こういうとき、犬の目を見ては絶対にいけない。「知らんぷりし、涼しい顔して、静かに立ち去る」、これに限る。吠えられただけで何事もなかった、ふう。悪い状況のうえにさらに悪いことが起きることをことわざで、「泣きっ面に蜂」というが、その最上級として、「峠にて野犬(とうげにてやけん)」ということわざを新しく提唱したいと思う。

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■こういうところを走っていきます、落石注意です。スケールがデカすぎて写真は難しいっす

本日の目的地・太魯閣(Taroko)の天祥(Tiansiang)には17時頃、無事に着いた。Ericはシングル、僕はドミトリーに部屋を取った。3日ぶりの宿、そしてベッド。洗濯も旅はじまって以来だ。

本日の走行距離は103km。距離は別にたいしたことないが、道のりのほとんどが山道だったわけで、それはそれはハードだった。1人ではこなせたであろうか疑問である。相方がいたからこなせたのだと、そのようにも思う。疲れでもうナチュラル・ハイだ。そのまま近くの食堂に夕飯に行った。

こんなときはビールに決まっている。「僕は飲むけど、Ericは飲むか?」と聞くと、彼もビール好きのようだ。すると、両手に2缶ずつ持ち、会計に持っていく。「ビールは僕のおごりだ」とEric。「マジっすか、ありがとう、いただきます」。

本日は健全かつ理想的な旅の1日であった。うむ。

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■中国人のツアーの団体客多かったなぁ、その観光バスがバンバン飛ばすんで、わりと危ないっす

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